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福祉施設体験研修2日目

研修2日目、朝。これから「あの場所」に行くのかと考えると、けっこう気が滅入る。さらに明日から新学期なので、二重に憂鬱になる。あーあ。

昨日と同じ場所で、今日も一日過ごした。手をつないで散歩に連れて行き、昼食をともにし、しゃべったりトイレしたりゴミを片づけたり施設内を移動したり等々。特に危険な出来事もなく、一日が終わった。以上。

・・・これではつまらないので、今日は、彼らの表情に注目した。利用者たちの感じていることが少しでも見えないものかと思ったのだ。結論から言えば、あるていど見えた方々がいた一方で、ぜんぜん見えない方々もいた。


ある利用者は、他の利用者に暴力をふるう要注意人物。どちらかというと表情をゆがませていることが多く、何を感じているのか読めない。その彼に、昼前に親から荷物が届いた。知らせを聞いて彼の表情が、とても明るくなる。俺が車椅子を押して、受け取りに行くことになった。守衛さんから受け取り部屋に戻ったあと開けた荷物からは、大きな絵本が出てきた。その絵本を受け取ったときの、彼の表情といったら!喜びを満面に表して、とても嬉しそうだった。

ある利用者は、気がおとなしく、普段は暴力の被害者になってしまうことが多い。その彼が、昼食の時とても嬉しそうな表情をしているのに気がついた。オヤと思ってよく見ると、彼は、隣に座った人が大きな声で独り言を話しているのを聞きながら、とても優しく微笑んでいるのだ。それは何とも心安らぐ表情だった。ただし職員によると、このように他の人の会話に反応できる人は極めてまれらしい。

ある利用者は、洗濯物を入れたカゴが床に落ちて洗濯物が床に散らばると、とても喜んだ。手を口の中に入れながら、吹き出している。職員によると、何か入っているものが散らばると喜ぶらしい。たしかに、何回やっても同じように喜んでいた。余談だが、利用者たちは「自分たちを喜ばせてくれる人」の言うことを聞くと、ある職員が言っていた。これは学校にも通じるだろう。

ある利用者は、これまで実習生が付いたことがないという、極めて暴力的な最要注意人物。その彼は、今日は昼過ぎに若い女の人に一対一で絵本を読んでもらい、その後はずっとおとなしくしていた。嬉しかったかどうかはわからないが、少なくとも気分が普段よりもとても落ち着いていたことは間違いない。


ここまでは、感じていることが多少見えた方々。反対に、ぜんぜん見えなかった方々もいた。

ある利用者は、おとなしいが自傷癖のある方。職員の話では、こだわりが強いなどの自閉傾向(閉じこもるわけではない、念のため)が見られるという。しつこく散歩をせがまれ、1時間近い散歩を3回もした。彼の表情を注視していたのだが、嬉しそうな表情は少しも見せない。逆に、自分の望む方向に行けないときは、ストレスのためか、自分の腕に何回もかみついた(かみついた部分は紫色になってかぶれていた)。3回目の散歩から帰ってきた後で4回目の散歩をせがまれた。おいおい・・・さすがにゲンナリした。

ある利用者は、何もしない。ソファーに仏陀のあのポーズで横になり、ずっとテレビを見ている。たまに自分のお尻をゆっくりとしたリズムでポンポンとたたいたり、はみ出したお腹をポリポリと掻いたりしている。職員の話では、散歩もせず、することは基本的に食べることだけ。俺だったら退屈死しているなぁと考えながら、彼の横顔を眺めていたが、ずっと無表情であった。


後で聞いた話だが、親族の訪問頻度は利用者によって大きく違い、多い人と少ない人では、やはり何かが違うとのこと。残念ながら詳しく聞く機会はなかったが、絵本の贈り物に対して見せたあの表情を思い出すと「たった一冊の本がこれほどまでの喜びを生み出せるのか」と、素直に感動してしまう。それにしても、いい加減この文章は長すぎる。結論は「愛情表現に王道なし」とでもして、筆を置こう。

なお下の写真は、例の送られてきた絵本である。

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