「ハンニバルは名将だったと言われているけど、どんな風に戦ったの?」
「彼の戦術の特徴は、敵を退却させるだけではないということです」
「どういうこと?」
「ハンニバルは、敵の退路を断って包囲殲滅に持ち込むのです」
「敵を退却させるのと、どう違うの?」
「退却した敵は再編成してまた襲ってきます。しかし包囲殲滅すると、膨大な死傷者が出て相手は回復不能になります。殺戮です」
「ひええ」
「織田信長も包囲にはこだわったみたいですね。長篠の合戦では敵を誘い出して、両翼から敵の退路を断って包囲したそうです」
「それで武田軍は再起不能になったのかあ」
「でも今はハンニバルの話ね」
「ほいほい」
私は戦場の分析が好きです。
- 戦略的にどういう意味があるのか、という地政学的な分析や、
- 指揮官のとった戦術が上から見るとどのようなものだったのか、
などを調べるのが好きです。
そこで、歴史マンガ『アド・アストラ』に出てくる戦いを上から見たアニメーションを作りました。
作ってみてわかるのは、ハンニバルのすごさです。当時は作戦行動をとること自体ほとんど行われていなかったと思うのですが、彼は兵を手足のように動かし敵を包囲しています。
特にカンナエの戦いは、ナポレオンのアウステルリッツの戦いのような、敵の戦術を先読みしてその裏をかいて大勝するという、見事な戦いです。ぜひ見てみて下さい。
目次
[まとめ買い] アド・アストラ ―スキピオとハンニバル―(ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: カガノミハチ
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3巻、トレビアの戦い
紀元前218年の12月、トレビア川を渡河したローマ軍とハンニバル率いるカルタゴ軍が戦った。兵力は共に4万弱だったが、ハンニバルはローマ軍を包囲し、殲滅した。
カルタゴ軍はまず投石によって挑発し、ローマ軍は前進した。カルタゴ軍の両翼の騎兵がローマ軍の騎兵に当たり、これを敗走させたのち、ローマ軍の側面へ方向転換。さらに伏兵の騎兵がローマ軍の後方に移動し、前のめりになっていたローマ軍は包囲された。
いやー、ハンニバルすごいですね。
以下はヒストリーチャンネルの動画です:
The Battle of the Trebia River (218 B.C.E.)
以下はYouTubeの「The Art of War」チャンネルの動画です:
なんだか動画によってだいぶ内容が違うような?
あと検索すると「Total War: Rome」というゲームの映像が出てきます。やりたくなるじゃないか!(笑)
6巻、カンナエの戦い
紀元前216年、カルタゴ軍5万にローマ軍8万が対峙した。ローマ軍は、カルタゴ軍が河川を利用すると予想。ローマ軍を河川に押しつけて包囲殲滅を試みると考えた。そして対応策として、敵中央を突破して敵を分断し敵の河川側を包囲殲滅し、反対側へ向かう作戦を立てた。だが、ハンニバルはローマ軍の作戦を予想済みだった。
これも他の動画があります:
The Battle of Cannae (216 B.C.E.)
Five Minute Battle Narratives: Cannae 216 BC
こちらはドラマ付きで本格的:
10巻、バエクラの戦い
紀元前208年、カルタゴ軍はイベリア半島に散在していた。これらの勢力が合流する前に叩くべく、スキピオは戦いを仕掛けた。
カルタゴ軍は高地に陣地を構え、さらにその全面の丘陵に軍団を配置していた。ローマ軍は、まず丘陵にいた軍団に当たりわざと後退。これに釣られて前進したカルタゴ軍の側面にローマ軍がぶつかった。そのあいだにローマ軍の別働隊が高地を迂回しカルタゴ軍の陣地を攻撃。これに対しカルタゴ軍は陣地内の兵士を両翼から出してローマ軍の側面を突く。さらに騎兵がローマ軍の背面に回った。
しかし戦いは消耗戦状態となり、包囲されていないカルタゴ軍は撤退。包囲されていたカルタゴ軍はローマ軍により殲滅された。
スキピオもすごい。
おわりに
ハンニバルのすごさがおわかり頂けたでしょうか?
紀元前200年代という連絡手段もろくにない時代に、いつ離反してもおかしくない他部族といっしょという言わば烏合の衆だった軍団を、見事に勝利に導いています。
その源には、とても深い集団心理の理解があったのだと思います。
人間がわからない私としては、少し分けて欲しいです(笑)